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官民が一丸となってイノベーション創出を支援する、U-FINOの取り組みとは

テーマ:一般社団法人うめきた未来イノベーション機構

官民が一丸となってイノベーション創出を支援する、U-FINOの取り組みとは

グラングリーン大阪が掲げる「みどり」と「イノベーション」の融合による豊かな未来生活の実現に向け、大阪・関西におけるイノベーション創出を加速させるために設立された一般社団法人うめきた未来イノベーション機構。官民が一丸となったイノベーション創出支援の取り組みについて、各機関から参画するU-FINO担当者に話を聞いた。

左から池田亮さん/大阪市経済戦略局 山下善寛さん/公益社団法人関西経済連合会(産業部 参事)東潤一さん/大阪商工会議所(産業部 ライフサイエンス振興担当 兼スポーツ産業振興担当)

一般社団法人うめきた未来イノベーション機構(以下、U-FINO)は、2017年に設立した「うめきた2期みどりとイノベーションの融合拠点形成推進協議会」を前身とする。新しい製品・サービスやビジネスが生まれるエコシステムを構築し、大阪・関西におけるイノベーションの創出を加速させる目的で、2022年9月にグラングリーン大阪の中核機能においてイノベーション支援の役割を担う運営法人として設立された。

「うめきた2期地区の開発が決定してすぐに、どのようなまちづくりを目指すのかを決めるために、関係者で多くの話し合いを重ねました。その中で、都市公園を中心としてイノベーションを創出するためにも、市民との共創が生まれる場を形成しようということになり、それには産学官の連携が必須であるということがわかりました。そこで、大阪府・大阪市及び関西経済連合会、大阪商工会議所、都市再生機構、大阪科学技術センターらの官民が連携して設立したのが『うめきた2期みどりとイノベーションの融合拠点形成推進協議会』です。U-FINOの前身となる協議会の設立後、グラングリーン大阪開発事業者も交えて新しいまちづくりの実現に向けてさまざまな取り組みをトライアルで続けていましたが、先行まちびらきが近づいてきたことで本格的に動き出すフェーズを迎え、大阪府・大阪市、関西経済連合会、大阪商工会議所、グラングリーン大阪開発事業者が参画する形で、2022年9月にU-FINOの設立に至りました」と大阪商工会議所の東潤一さんが組織の設立背景を語る。

「大阪府は健康寿命が全国と比較して低い順位です。特定健診の受診率も全国最低水準です。Ex-CROSSで気軽にスポーツを楽しめる機会を増やしていきたいですね」と大阪商工会議所の東潤一さん。

2022年9月に始動したU-FINOの参画メンバーは大阪市、関西経済連合会、大阪商工会議所、グラングリーン大阪開発事業者代表として阪急阪神不動産。官民が一体となったメンバーで先行まちびらきに向けたトライアル事業を展開している。実際に官民一体組織が始動してからの状況について、大阪市の池田亮さんはこう語る。
「この場にいる3名は協議会時代から事業を担当しており、U-FINO設立後はU-FINOの立場で継続して担当することになりました。同じひとつの組織として関わることになり、やはりこれまで以上の一体感を感じることができています。また、現在は中核機能の施設の管理・運営の役割を担う一般社団法人コ・クリエーションジェネレーター(CCG)とともにグランフロント大阪ナレッジキャピタルコラボオフィスに入居し、同じひとつ屋根の下でディスカッションを深め、開業に向けたプレ事業を構築しています」

「大阪最後の一等地であり、緑あふれる都市公園があるということが、グラングリーン大阪の最大の特徴です。日本だけでなく世界中から多様な人々が集まってきて、ハブとなるような街の姿をお見せしたいです」と大阪市の池田亮さん。

新しいまちづくりの実現に向けて、イノベーションの創出を支援するU-FINO。官民が連携していくことのメリットについて、池田さんはこう続ける。
「それぞれの強みを合わせることができるのが一番のメリットです。大阪市を例に出すと、行政の限界があるとすれば大阪市というエリアからなかなか抜け出すことができないことです。一方で、行政の関りがあるという安心感は民間企業にはない特性だと思いますので、民間企業が持つ地域性を超えた機動力やスピード感と合わせて取り組んでいけるというのが大きいと思います」

「社会課題の解決や新産業創出に向けて、情報・人・技術などをグラングリーン大阪に集めることで、新しい製品・サービスやビジネスが生まれるエコシステムを構築し、大阪・関西におけるイノベーション創出を推進する」というビジョンのもと、参画機関の持つネットワークやノウハウなどの強みを官民が共有してイノベーション支援を行うU-FINO。では、具体的にどのような事業が行われていくのだろうか。

「U-FINOでは開業に向けた各種トライアル事業に取り組んでいます」と関西経済連合会の山下善寛さんが説明する。まずひとつが「オープンイノベーション交流の場形成」だ。
「関西経済連合会には約1,300社の会員企業がいます。会員企業の皆さまにU-FINOの取り組みを発信していくことも大事な役割です。またグラングリーン大阪の中核機能において、大企業とスタートアップ企業との橋渡しができるよう、トライアル事業として『うめきた響合の場』を2020年度から実施しています」

「グラングリーン大阪が、京阪神のスタートアップのハブとなり、企業や大学、研究機関なども集まるオープンイノベーションの場になり、世界中のベンチャーキャピタルから資金調達ができたり、マッチングができる場にしていきたいと思っています」と関西経済連合会の山下善寛さん。

「うめきた響合の場」は、縁日の「出店(でみせ)」のようなイメージで、大企業のオープンイノベーション部門や大学、支援機関の担当者が、出店のように集い、交流できる拠点だ。こうした場ができることにより、スタートアップ企業や大学などが企業と1対1で会いやすくなり、アイデアや課題を直接相談できる機会が増え、関西でのイノベーション創出にもつながることが期待される。

「2023年2月に開催した『U-FINO 設立記念イベント』で実施した『第3回うめきた響合の場』では2日間で延べ137件の面談が行われました。今年度は東京を拠点とするスタートアップ企業も参加してくださり、年々規模も拡大しています。グラングリーン大阪は、大阪のみならず関西一円のハブとなる場所です。2024年夏の先行まちびらきには実装できるようこれからも取り組んでいきます」と山下さんは言う。

2023年2月に開催された「第3回うめきた響合の場」では、関西を代表する企業や支援機関、大学が参画し、全27の機関が「出店(でみせ)」のようにブースを設置し、スタートアップ企業が個別に相談ができる面談タイムを設けた。(写真:木村正史)

また「情報発信」にも力を入れる。「U-FINO 設立記念イベント」で開催されていた「イノベーションストリームKANSAI 6.0」もそのひとつ。関西圏の大学や研究機関による最先端の技術や製品・サービス化への期待が高い研究に、来場者に実際に触れてもらう展示会とイノベーション創出に関連するセミナーなどを開催するイベントだ。
「関西の大学や研究機関で行われている最先端の研究やサービスを広く紹介するとともに、研究に来場者が触れることで、サービスや製品のブラッシュアップにつなげ、社会に還元していくことなどを目的に開催する『イノベーションストリームKANSAI』は、前身の協議会が設立した2017年度からスタートしました。今回で6回目の開催となりますが、来場者の方々にも理解していただきやすい、VRコンテンツやデモ機などによる体験型の展示に進化していきました」と池田さん。

26の関西の大学、研究機関等が参加した「イノベーションストリームKANSAI 6.0」は、最先端の技術やサービス・商品化に結びつく研究について、来場者が各出展者の体験型展示により研究内容を体感できる展示会。(写真:東谷幸一)
Ex-CROSSでは、パラスポーツ種目の体験会も開催。ブラインドサッカーはガイドの声を頼りに音の鳴るボールでプレイする競技。女子日本代表の選手と一般来場者がアイマスクを装着してともに楽しむことができる。

また、スポーツとエンターテインメントやテクノロジーの融合による体験型イベント「Ex-CROSS」も、前身の協議会の頃から継続している情報発信のトライアル事業だ。トップアスリートを招いてのエキジビション、スポーツ・ウエルネスの最新技術や次世代型アクティビティを楽しく体感できるブースが並ぶ。
「市民が気軽に参加できるスポーツのショーケースイベントですが、スポーツ・ウエルネス企業の最新テクノロジーを実証実験する場でもあり、企業同士がマッチングする狙いもあります」と2017年からイベントを手がける東さんが言う。

U-FINOのトライアル事業として、「グローバル事業展開・コミュニティ形成」も展開している。「Medtech Connect」とは、医療・ヘルスケア業界における情報交換や交流を促進するためのネットワーキングイベントのこと。アメリカ、シンガポール、台湾で開催されており、日本で3回目の開催となる「Medtech Connect Osaka 2023」では、グローバルな視点から日本のヘルスケア・エコシステムの構築の必要性について議論するシンポジウムを開催した。

Medtech Connect Osaka 2023におけるパネルディスカッションの様子。メドテックに携わるエコシステム関係者間で活発な意見交換が行われた。

そして最後に「イノベーション人材育成」にも取り組んできた。関西はテクノロジーの宝庫であり、テクノロジーは普遍的付加価値を生むため、それを見える化し、事業化したい人材を発掘、育成し、テクノロジーと人が反応する仕組みをつくることを目的に、2019年度から実施しているのが「T-CEP(Technology Commercialization & Entrepreneurship Program)」。このイノベーション創出のための人材育成プログラムでは、技術を開発した大学、研究機関の研究者と関西を中心とした企業のビジネスパーソンが受講者として参加し、当該技術を共同して事業開発することにより、事業プロデューサーへと成長できる環境を提供している。今後も「革新的な知を富に変える」ために、アントレプレナーやイントレプレナーのプラットフォームとして機能させていく。

T-CEPでは過去の受講者が今年度の受講者をコーチとして支援する仕組みを設けている。過去5年間で100名ほどのコミュニティに成長した。

「それぞれのイベントやプログラムは、現段階では点でしかないかもしれませんが、今後は連携して面で広げていけるようにアップデートしていきたいです。多様性こそがイノベーションの源だと思いますので、さまざまな人が訪れる環境に皆さんと一緒にしていきたい」と池田さんが意気込みを語る。
2024年夏の先行まちびらきに向けてカウントダウンが始まったグラングリーン大阪。U-FINOによる素地が整い、世界にはばたく大阪・関西発のイノベーションを目にする日は近い。

写真:内藤貞保 文:脇本暁子

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