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開発事業者が一丸となって取り組む、環境に配慮した次世代の新しい都市モデル

テーマ:まちづくり方針

開発事業者が一丸となって取り組む、環境に配慮した次世代の新しい都市モデル

先行開発区域のグランフロント大阪が開業して以来、うめきた2期のまちづくり基本計画策定や基盤整備、民間提案募集実施などプロジェクト全体のプロデューサー役を担うUR都市機構(独立行政法人都市再生機構)。 そして「みどりとイノベーションの融合拠点」をテーマにしたまちづくりに向けて、「New normal/Next normal」「Society5.0」「SDGs」といった環境対策や防災など、世界へ発信する新しい都市モデルの実現を目指して開発を進めている事業者たち。彼らが、うめきた2期のまちづくり方針について語る。

左から、安田和弘さん/UR都市機構(西日本支社 うめきた都市再生事務所 事業計画課 課長)、舩橋秀暢さん/三菱地所株式会社(うめきた開発推進室 副室長)、中田真人さん/三菱地所株式会社(うめきた開発推進室 兼 グランフロント大阪室 統括)、道喜開視さん/株式会社 竹中工務店(大阪駅北地区事業本部)

「2013年にオープンしたグランフロント大阪は、大阪駅の周辺を大きく変えた開発でした。ショッピングモールやハイグレードオフィス、知的創造拠点であるナレッジキャピタルなど注目される施設はもちろん、なにより人の流れが大きく変わりました。大阪駅に降り立つと吸い込まれるかのようにグランフロント大阪へ導かれていく動線や、うめきた広場などだれもが集いやすい空間づくりを行うなど、関係者が一丸となって空間の使い方に取り組んだ成功例だと思います」とUR都市機構の安田和弘さんが話す。

「大阪駅の面前にこういった大きな公園がある開発というのは、東京駅前に公園ができるのを想像するとそのすごさがわかり、改めて身が引き締まる思い」とPRルームにあるうめきた2期の模型を見ながら話す安田さん。

うめきた2期では、開発事業者を選定するために幅広く提案を募る民間コンペを実施したが、当時を振り返り安田さんはこう続けた。
「民間コンペ提案は、開発する敷地だけでなく、都市公園や道路も含めた全体的なもので、環境や防災の面、公共空間のデザイン、イノベーションの仕組みまで幅広く多岐にわたるものでした。とくに平坦な土地に位置する公園の中にアンジュレーション(起伏)をつくり出すという発想は、民間企業のノウハウや知恵、知見が最大限発揮されたものだったといえます。また大阪の歴史や風土に着目した点や、隣接するグランフロント大阪や新梅田シティといった周囲との連携など、うめきた2期地区単独の開発だけでなく、日本第二の都市である大阪の持続的な成長にプラスになるであろう提案内容ばかりでした」

工事着工前のうめきた2期地区。環境に配慮した対策や最先端技術の導入など、これから次世代の新しい都市へと生まれ変わる。

コンペ提案をするにあたり、三菱地所の中田真人さんは「みどりとイノベーションの融合拠点」という与えられたテーマに当初抱いた印象をこう語る。
「うめきた2期のまちづくり方針に“世界の人々を惹きつける比類なき魅力を備えた「みどり」”とありますが、実際の都市公園の大きさは約4.5ヘクタールであり、ニューヨークのセントラルパークが341ヘクタールなので海外の公園と比較すると、けっして面積は広くないというのがスタート地点でした。単純な緑量ということではなく、都市空間にどうやって「みどり」を取り入れ、また、都市公園の魅力を最大限引き出すにはどうしていくか、これこそが我々がコンペで応えていかなければならない課題だと感じました。その答えのひとつとして、街区全体を周辺に対して開いた「みどり」の大地として捉えようと考えました。そして、その「みどり」の大地の中で建築の姿はどうあるべきなのか、建築が主役なのではなく、あくまで「みどり」が主役であるというスタンスで議論を深めていったのです」

「道路に面してファサードを設けるといった、都市開発によく見られる手法ではなく、あえて正対させない、いろんな角度をつけることで“間”をつくり、周囲に対して開いた空間づくりを意識しています」と中田さん。
「今回コロナ禍で改めて都心で働く意味を皆さんも考えたと思います。必ずしも都市中心で働かなくてもよいという選択肢が増えたなかで、都市が与える価値はなにかをこれまで以上に問われることになりました。うめきた2期ではパプリックスペースを柔軟に活用しながら、新しい価値や街の個性を与えていけたらと思っています」と舩橋さん。

「“みどりとイノベーションの融合拠点”ということですが、これまでのイノベーションは屋内で行うことが多かった。それを外に飛び出していくというのはなかなか難しいと感じました。また、公共空間をどう活用していくかが非常に大きなテーマだと思っています。北街区と南街区の間には、グランフロント大阪につながる道路が公園を分断するように東西に渡っていますが、その道路空間をどう利活用していくか。現行の法令制限ではできることは限られますが、歩行する機能だけではなく人が滞留する機能を持たせて、例えばテラス席を設けるなど、そうした可能性はないかと模索しているところです」と三菱地所の舩橋秀暢さんが続ける。

「GAFA*等のグローバル企業によるライフスタイルの変革と同様に、うめきた2期地区も都市公園を中心としてさまざまな機能を盛り込んだリアルとバーチャルが融合した舞台となるような都市をイメージしています」と道喜さん。
大規模帯水層蓄熱システムの仕組み。うめきた2期地区では大規模帯水層蓄熱システムを導入し、街区間の熱融通を行う計画が進められている。

次世代の新しい都市モデルとして世界に発信していくうめきた2期では、環境に配慮した対策や新エネルギーなど最先端の技術を積極的に導入する予定だ。その一例を竹中工務店の道喜開視さんが説明する。
「環境に配慮した具体的な対策としてはまずCO排出量削減。環境省が提言しているのは2030年度までに26%削減という目標ですが、うめきた2期ではそれを超える35%削減を目標に掲げ、さまざまな新技術を採用していく予定です。そのひとつが国内初の導入となる大規模帯水層蓄熱システム。これは地下50〜100mの深さまで井戸を掘り、夏場は外気温より冷たい地下水を汲み上げて冷房に利用し、生じた温排熱を帯水層に蓄え、冬場は暖房に利用、生じた冷排熱を再び帯水層に戻すシステムです。また、あべのハルカスでも導入されているバイオガス発電も導入を予定しています。これは排水処理汚泥や厨房排水をメタン発酵させたバイオガスをエネルギー変換して活用するシステムです」と環境負荷の低い自立したエネルギーインフラを整備していく予定だ。それとともに災害時には周辺の避難者や帰宅困難者を受け入れる場であり、広域避難地としても機能していく。

「大阪駅前で行われるこれほどの規模の開発は今後も国内外から注目されることでしょう。スマートシティ、スーパーシティ、ニューノーマルなどいろんなことが求められていると思います。すでに周辺にお住まいの方や働かれている方から、多くの期待が寄せられています。まずは、そうした地道な地元とのつながりを大切にして、地域の皆さんから愛される街になるため取り組んでいきます」と安田さん。
うめきた2期はこれからの時代に求められる新しいまちづくりの形を示し、都市のあらゆる価値を創出していくだろう。大阪の発展を牽引する新しい都市は、周辺の地域にとっても頼もしい存在になるに違いない。

*GAFA:アメリカの主要IT企業であるグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)、フェイスブック(Facebook)、アップル(Apple)の4社の総称。ガーファと呼ぶ。

写真:蛭子真 文:脇本暁子

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