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日本を代表するスーパーゼネコンがタッグを組み、世界に開かれた新しいまちをつくり出す

テーマ:コンストラクション

日本を代表するスーパーゼネコンがタッグを組み、世界に開かれた新しいまちをつくり出す

大阪中心部の最後の一等地であるうめきた2期地区に新しいまちが生まれようとしている。みどり豊かな都市公園を中央に、南街区と北街区に分かれそびえ立つ高層ビル群。これら建物の土台や強固な骨組みをつくるのが、大阪を拠点とするスーパーゼネコンである竹中工務店と大林組だ。共同事業を行うジョイントベンチャー(JV)を組み、両社の技術や知見を結集して、大阪最大規模の一大プロジェクトに挑む。

左から、後藤和祥さん/株式会社 竹中工務店(大阪本店 営業部 開発営業部長)、栗田佳彦さん/うめきた2期共同企業体(うめきた北東地区 北賃貸棟工区事務所 総括所長 兼 総合事務所所長)、大島 勇さん/うめきた2期共同企業体(うめきた南西地区 南賃貸西棟工区事務所 総括所長 兼 総合事務所副所長)、西川真次さん/株式会社 大林組(大阪本店建築事業部理事 営業統括部長)

竹中工務店と大林組がタッグを組むのは今回がはじめてではない。2013年に開業したうめきた1期と呼ばれる先行開発区域のグランフロント大阪でも、JVを組み施工にあたった。
「大林組も私たち竹中工務店も、もともと大阪を地盤にし、いわば大阪に育てていただいた会社です。うめきたのまちづくりが大阪の将来を担うことになるだろうという想いを両社とも感じ、身の引き締まる思いでスタートしたのを覚えています」と先行開発期から携わる竹中工務店の後藤和祥さんが当時を振り返る。
「うめきた1期のときに両社で協力し合い、知恵を出してたくさんのハプニングを乗り越え、いろいろな経験をしました。その実績を評価いただき同様の体制で取り組ませていただいていることから、うめきた2期でもそのノウハウをしっかり継承していきたいと思っています」と同じくうめきた1期のときから関わってきた大林組の西川真次さんが続ける。

「違う文化、風土を持つ2社が混ざり合うことでイノベーションが生まれ、1+1=2ではなく、2.5や3以上となり、切磋琢磨することで結果的に2社の将来もより良いものになっていくと思います」と竹中工務店の後藤さん。
「ゼネコンという建設業に携わる人間にとって志は一緒です。お互いがどういうふうにやるんだろう? と、とても参考になりますし、一方で、負けられない! という気持ちもあり、両者が組み合わさって相乗効果でいい方向に働いています」と大林組の西川さん。

複数の企業が組むJVは、通常であればどこかひとつの会社が主導して構成することが多いが、竹中工務店と大林組は、うめきた1期に引き続き、今回の2期工事においても、50%-50%と完全に対等な立場として共同企業体を組んでいる。共同で建設作業をするメリットをうめきた2期共同企業体の総合事務所副所長の大島勇さんが挙げる。
「両社が持つ技術やそれぞれの強みを採用できることが大きな理由のひとつです。技術面でいえば竹中工務店が得意とする工法や特許などは、大林組単独であればできないことも採用できるし、我々の持っている技法も同様です。工事を効率的に進める上でお互いが持っているものを出し合い作業できるのは大きなメリットです。また、2025年の大阪・関西万博に向けて関西において同時期に多くの工事が行われています。そのなかで多くの作業員や資材を集めることが必須ですが、大阪を地盤として培ってきた竹中工務店と大林組の両社の力を結集することで、大規模なプロジェクトに必要な人材や資材を集めることができます」

「これまで多くのプロジェクトを手掛けましたが、建物だけでなく公園と一体のプロジェクトに参加できるのははじめて。会社員人生としても最後の一大プロジェクトになるかと思う」と総合事務所副所長の大島さん。
「お互いの信頼関係を大事にして《対等で公平な企業体運営》を共通理念とし、社員が一人ひとりしっかり共有しています」と総合事務所所長の栗田さん。

うめきた2期共同企業体の総合事務所所長の栗田佳彦さんは、共同企業体の体制をこう説明する。「共同企業体の体制としては、大きく5つの工区を統括する総合事務所という組織を共同企業体の下に置いています。そこでは竹中工務店と大林組から人員を半々出しています。南街区は大林組が主担当し、北街区は竹中工務店が主担当とそれぞれの工区で担当を決めていますが、基本的には2社の社員が混ざり合いトータルで半々になるように構成されています」

「両社の企業風土も異なるし、ITインフラもそれぞれ違っているなかで、うめきた1期のときから共同企業体を組成するにあたり議論を重ねました。新しいシステムを導入することも検討しましたが、やはりリスクも大きく効率的ではないという結論に至りました。その結果1期のときから主担当を決めることと、意思疎通や方針決定などを円滑に情報共有するために、総合事務所という組織を設置することになりました。行政やマスコミの対外的な窓口や、複数ある事業者や設計事務所との調整を総合事務所が対応しています。実は私は1期で総合事務所におりました。このときの1期での経験を活かし、2期では立ち上げからスムーズに移行できたと思います」と総合事務所の成り立ちと役割を西川さんが教えてくれた。

最盛期には11台もの専用機械を用いて進められた山留め工事。掘削工事中に周囲の地盤や建物への影響を防ぐため、周辺地盤を支える壁をつくる工事です。
最大規模で地下3階~地上39階にもなる建物を支えるため、地盤面から約48m深さまで掘削し、直径3.8mの鉄筋コンクリートによる杭工事を行った。

2020年12月から着工した南街区賃貸棟・北街区賃貸棟。周辺の地盤が崩れないよう安全に掘削工事を実施するため地中30~40mの深さまで壁をつくる山留め工事と、建物を支えるために最大約48m深さの堅固な地盤まで掘削し、最大3.8mの直径の鉄筋コンクリートによる多数の杭を打ち込む杭工事は、2021年12月に終了している。

大林組が主担当となっている地下3階~地上39階建てからなる南街区賃貸棟の高層階には、ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア」が関西に初上陸することが決まっている。
「現在は掘削工事がはじまり、地下は約20m掘り下げ、並行して、地上の鉄骨を立てはじめていきます。これは逆打ち工法という特殊なやり方で、1階の床を一番はじめにつくり、地上階と地下階を同時に進めていく工法です。広範囲に深く掘ると周辺の地盤に影響が出やすく、近くには新駅の線路が走る非常に特殊な場所でもあります。そうしたリスクを抑えた一番安全な工法であることから採用しました」と栗田さん。
「通常、山留め壁は安全に掘るための目的で仮設としてつくられるもので、建物の躯体としては利用しないものです。しかし、我々はうめきた1期のときに、現地で実物大の試験を実施し、その結果に基づき本体の構造体として利用することに取り組みました。うめきた2期でもその実績を活かし、山留め壁を本体として利用することになりました。大阪は他のエリアに比べて地下工事が大変難しいことで知られています。すぐ横には大きな河川があり、水位も高い。さらに今回は、市街地であり鉄道にも近接しているという厳しい条件が揃っていますが、竹中工務店も大林組もこれまで大阪でかなりの地下工事の経験を積んできた会社です。そのノウハウを結集し、安全性を高めた工事を行うことができると自負しています」と西川さん。

竹中工務店の後藤さんも続ける。「私は大阪生まれの大阪育ち、そして大阪を地盤とする会社に勤務していますが、大阪は東京に比べて国際的な知名度が低いと口惜しい気持ちでした。うめきた2期の新しいまちに新駅が完成することは、関西国際空港へのアクセスが向上され、世界に開かれた都市になります。大阪のまちがグローバルな都市間競争にも勝てる一大拠点になるよう、我々も精いっぱい頑張りたいと思います」
竹中工務店と大林組という日本を代表する両社がタッグを組み、技術や英知を結集して創造する新しいまちは、大阪の明るい未来をつくっていくだろう。

ポートレート:蛭子 真 文:脇本暁子

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