FEATURES

Focus on

緑あふれる街を象徴する、創意工夫に富んだ道路空間とは

テーマ:道路グレードアップ整備方針

緑あふれる街を象徴する、創意工夫に富んだ道路空間とは

JR大阪駅を始め7駅13路線の地下鉄や私鉄が集結する西日本最大のターミナル駅の眼前に誕生するうめきた2期。約4.5ヘクタールの都市公園の建設工事が進む中、大阪駅直結の商業施設ルクア大阪があるノースゲートビルディングやグランフロント大阪とスムーズにつながる立体通路や、公園を横断する大阪駅北1号線や2号線などの道路の整備が進められている。快適で活力とにぎわいに溢れ、美しく風格を備えた都市空間にふさわしい道路とはどういったものだろうか。

左から、林孝光さん/独立行政法人都市再生機構(西日本支社 うめきた都市再生事務所 事業調整課 主幹)、吉岡雄一郎さん/三菱地所株式会社 うめきた開発推進室 副室長)、橋本武士さん/阪急阪神不動産株式会社(開発事業本部 うめきた事業部 うめきたグループ 課長)、小野光則さん/株式会社 日建設計(都市・社会基盤部門 都市デザイングループ ランドスケープ設計部 アソシエイト)

基盤整備を担う独立行政法人都市再生機構(以下、UR都市機構)の林孝光さんは、開発事業者を選定するに至った経緯をこう話す。
「先行開発区域に引き続き、うめきた2期区域でも関西ひいては我が国にあらたな国際競争力をもたらすようなまちづくりを行うべく、うめきた2期地区まちづくり方針が平成27年3月に策定されました。そこで『みどりとイノベーションの融合拠点』というコンセプトが決まり、約4.5へクタールの都市公園を含めた一体的なまちづくりを行っていただける開発事業者を選ぶこととなりました。街の中心部に位置し地区内と周辺地域をつなぐための骨格となる道路はURが主体となる土地区画整理事業によって整備されますが、『にぎわい軸』として東西を横断する駅北1号線と、『シンボル軸』として南北に縦断する駅北2号線など、道路空間においても民間の創意工夫やグレードアップを求めることにより、まちづくりコンセプトの実現をめざしました。コンペ提案ではこれらを十分に実現できるような幅広い提案をいただいた事業者を選定し、関係者が一体となって道路整備に取り組んでいます」

「うめきた2期を訪れる人が新たな1歩を踏み出せるきっかけとなるような場所になれば素敵だなと思います。人々が出会って経験したことがまた新たなことにつながっていく、スタート地点のような場所になることを期待しています」とUR都市機構の林孝光さん。
道路と公園が一体となったステッププラザ断面図(駅北1号線)のイメージ。

北街区と南街区を分断するように公園の中央を東西に貫く駅北1号線では、公園との一体化を図る工夫が施されている。そのひとつがステッププラザだ。
「うめきた公園には街の象徴空間としてリフレクション広場、ステッププラザ、うめきたの森という3つの広場を計画しています。そのうちステッププラザは、公園の中央を突き抜ける道路と公園を一体とする空間が特徴です。特定の目的を持って訪れる方が多い公園とは違って、阪急大阪梅田駅方面から福島、大淀方面の東西エリアを往来する一般通行者の方々に対しても、ステッププラザがうめきたの街での取り組みを発信するための接点となることを期待しています」と話すのは阪急阪神不動産の橋本武士さんだ。

「道路は安全性の確保が大前提ですが、その上で、道路のソフト面の利活用について今後詰めていく予定です。高質に整備された道路空間において、道路占用物件などのにぎわい施設も加わることで、他の都市とは違う、今まで見たことないような体験ができるようになればと思います」と阪急阪神不動産の橋本武士さん。
「私は関東の出身なので特に大阪の寛容さを感じていますが、うめきた2期の公園や道路にも大阪らしい多様で、寛容性のある場所がたくさん用意されています。関西国際空港とも直結し、世界に開かれた玄関口となるうめきた2期で世界に大阪を大いにアピールできると思います」と日建設計の小野光則さん。

道路を底部として両脇が緩やかな段差状になったステッププラザを提案したのは、都市公園のリードデザインを手掛けたGGNだ。都市公園と道路の設計を担当する日建設計の小野光則さんは、ステッププラザの提案に新たな気づきを得たという。

「本プロジェクトでは、公園などの施設はもちろん、それらに面する道路も含めてひとつの象徴的な場所にしようというのがGGNからの提案でした。道路も公共の場所ではありますが、公園のように自分の場所として感じられるかといわれるとなかなかそうではないと思います。ステッププラザによって、通行人が道路に面した段差状のステップをベンチ代わりに腰かけたり、通り抜ける人や対岸の景色を眺めたりと魅力的な道路空間になります。公園と道路を一体化することで、道路が公共の場として開かれ、どんな人でもここが自分の場所だと感じられるような、大阪らしい寛容性のある空間になると思います」

公園と一体となった道路空間にするために景観面で工夫している点は他にもあると小野さんは続ける。
「ひとつの空間として感じられる工夫として、公園と道路で同じ風合いを持った舗装材を使うことを考えています。とは言え、道路整備において最も優先することは安全性です。どんなにデザインが良くても優先すべきは人命であるので、すべての場所でそういった舗装材を使用することはできません。特に車両の通行が多い交差点では安全性の観点から使用ができませんが、『にぎわい軸』では、約120mの長さにわたって道路と公園の空間が一体化された仕上げを計画しています。また道路の中央部では、イベント時に車道と歩道を一体的な広場空間として確保するために、可動式の中央分離帯(サヤ管式防護柵)や、歩車道の境界には上げ下げができる横断防止柵を設置する予定です」

駅北2号線は公園の南北を縦断し、街の「シンボル軸」として位置付けられている。歩道は自然石舗装としてグレードアップするが、ライトアップに関しても先行開発区域とは異なった取り組みを行うという。
「街路樹の根元にコンセントを用意してそのまま照明が取り付けられるようにしているのは、先行開発区域のグランフロント大阪でも既に取り入れています。ただ、先行開発区域ではアッパーライトですべての街路樹を照らしているのに対して、うめきた2期ではより生物多様性に配慮したまちづくりをしているので、公園や施設の入り口などポイントごとに照明を配置し、全体的な照度を抑え、公園と調和したライトアップを目指しています。これにより、うめきた1期の商業的な華やかさと対比する形で、うめきた2期のまちづくりのコンセプトである『みどり』の一体化を表現できればと思っています」と小野さんは言う。

「公園と道路に民間事業者が提案できる開発という希少なプロジェクトに携わらせていただいています。基本性能を維持しつつ新しい道路にしていければと思いますので、ここを訪れる方々にその想いを感じていただけたら嬉しいです」と三菱地所の吉岡雄一郎さん。

うめきた2期のまちづくりのコンセプトである「みどり」との一体化に関して、三菱地所の吉岡雄一郎さんはこう説明する。
「駅北1号線、2号線につきましては、まちづくりの基本計画において水と緑の骨格軸と位置づけられおり、道路の街路樹と公園の緑、沿道の建物の壁面や屋上緑化と合わせて“緑の谷”のようにひと続きに感じていただけるよう、公園内の施設であるネクストイノベーションミュージアムなどの施設の緑化や、公園の丘状の緑化など、断面的にも緑を連続的に確保する計画としています。」

街全体が緑に包まれた都市景観にしていくのは、エリアの西側に位置する駅北3号線や南側の九条梅田線についても同様だ。駅北1号線や2号線の内容を踏まえて、橋本さんはこう話す。
「駅北3号線というのは『シンボル軸』から開発地区を隔てた反対側にある道路ですが、ここや九条梅田線はさきほどの『にぎわい軸』や『シンボル軸』に比べると車の要素が強い場所となります。どうしても『にぎわい軸』や『シンボル軸』の陰に隠れているように見えがちですが、そうならないよう景観面での配慮をしています。駅北1号線や2号線と同じように、使用する舗装材をうめきた2期地区で統一したり街路樹も比較的大きい規格のものを取り入れたりと、エリア全体で一体感のある道路景観を形成し、歩行者にとって快適な道路になるよう提案しています」

大都市には必ず、人々に愛されるその都市の顔となる大通りが存在する。類まれな緑に覆われた美しい道路は、これからの大阪を代表するものとして、行き交う人々に強い印象を残していくだろう。

写真:内藤貞保 文:脇本暁子 

Back