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多様な人々が行き交う街で、みんなが満足できる子育てを

加藤沙耶

多様な人々が行き交う街で、みんなが満足できる子育てを

少子高齢化、待機児童、介護離職などの社会問題に取り組むべく、“人”を軸に「保育」「人材」「介護」を展開するライクグループ。同グループで子育て支援サービスを手掛けるライクキッズの広報業務に携わる加藤沙耶さんに話を聞いた。

待機児童が社会問題として大きく取り上げられていた2017年、およそ26,000人いた待機児童数は、以後4年間で約5分の1に減少。4年連続で最少を更新している(厚生労働省調べ)。「わが社の子育て支援サービスは0歳から小学校入学前までのお子様をお預かりする認可保育園、主に小学1〜3年生までのお子様を放課後にお預かりする学童保育、企業で働く方のお子様を優先してお預かりする事業所保育の3本柱で展開しています。前身はサクセスアカデミーという学習塾が母体で、塾で働く講師のお子様を預かる施設として始まりました。1991年には学習塾から保育事業に切り替え、2009年にライクの傘下となって全国展開しています」

加藤沙耶さん/ライク株式会社 広報課 主任

全国380ヶ所以上の施設を展開するライクキッズは、グループのネットワークを生かした強みがある。「弊社では特別なサービスをアピールすることよりも、安心・安全にお子様をお預かりするという実直な姿勢を大切にしています。それには、お子様と保護者に満足していただくのはもちろん、職員に満足してもらえる環境づくりが必要です。たとえば保育士に対しては個々に成長や求めるものも異なり、画一的な方法では適正な評価が難しい為、個人ごとにしっかりと目標を定める成長支援制度を設け、本部による公平な評価システムを導入しました。またグループ運営の利点を生かし、全国の園長先生を集めて交流の場を設けたり、スーパーバイザーと呼ばれる巡回スタッフがオーバーワークになりがちな保育士のサポートを行ったりしています。とくにコロナ禍では職員のメンタルサポートにも力を入れました」

認可保育園、学童保育、事業所保育と、環境の異なる3つのチームが、それぞれ情報共有することもある。「園長会議や保育士会を開催することによって、他の施設の情報を共有し、自分の園の改善点を考えてもらう場をつくっています。保育園はどうしても閉鎖的な環境になりがちです。このような機会を設けることで各園が運営の参考にして、新しい挑戦へのきっかけになればと思っています」

認可保育の「にじいろ保育園」で使用する家具は基本国産ヒノキの間伐材を採用している。床材にも木材を利用しクッション性を持たせ安全性を担保している。

「伸びやかに育て、大地の芽」を保育理念に掲げるライクキッズ。そのプログラムの一つに “自然共育”がある。「園の内装はすべて木材を取り入れていて、お子様たちが使う椅子やテーブル、ロッカーにはヒノキの間伐材を使っています。ヒノキは柔らかく殺菌効果あって、香りもいいですよね。都会では園庭のない保育園も少なくありません。自然に触れる機会の少ないお子様たちに、木の温もりを感じてもらえればと思います」

「にじいろ保育園 海岸三丁目」は2022年11月、「みなとモデル二酸化炭素固定認証制度」の最優秀賞を受賞。国産木材の使用に優れた建築物などに対して認定を行う港区独自の制度で、地球温暖化防止の一環として新設された。
街の環境に応じて保育園の運営は異なるが、どの園にも共通しているのはお子様の笑顔、と話す加藤さん。

うめきた2期の開業に合わせ、ライクキッズの認可保育園が開園することも決定している。「うめきた2期という一つの新しい街が誕生するにあたって、保育園が果たす役割はとても大きいと感じています。オフィスや商業施設、住宅、そして広大な公園ができることで、大きな人の流れがうめきた2期に生まれるでしょう。周辺の地域も含め、多くの人がこのエリアに定着するわけですが、街の永続的な発展を考えると、単に保育施設をつくっておしまいではなく、保育園がいかに街のコンセプトに溶け込んで、地域に貢献すべきかを考えています。一方で、お子様たちにとっての一番の魅力はなんといっても公園でしょう。大阪は緑が少ないと言われますが、うめきた2期地区では4.5ヘクタールという広大な都市公園に四季折々の自然が出現します。自然の風や匂い、音を感じて、さまざまな動植物と出合える環境は、小さなお子様たちにとって大切なものです。都会でありながら自然体験を享受できる、素晴らしい場所になることを期待しています」

にじいろ保育園で行われている海外交流プログラム、にじいろワールドフレンズの様子。言葉や文化の壁を超えて、外国の子どもたちに興味津々の園児たち。

年齢や職業、国籍などさまざまな人々が行き交うであろううめきた2期は、多様性が生まれる街でもあると加藤さんは続ける。「保育園で好評だった試みに、海外交流プログラムがあります。オンラインで世界の保育施設たちとつなぎ、スクリーン越しに交流を行いました。シンガポールやオーストラリア、ケニアなど、言葉も文化も異なる国とライブで交流したのですが、お子様たちは自分の国の当たり前が、ほかの国では当たり前ではないということを素直に受け止めていました。地元の方々との交流はもちろん、外国人旅行者との出合いなど、うめきた2期地区では多様性を感じる機会も多いでしょうから、その点にも無限の可能性を感じています」

少子化や女性の社会進出などにともなって、保育の現場は日々変化している。そんな変化に柔軟に対応しながら、地域に寄り添った子育てを目指すライクキッズ。新しい街で育つ子どもたちの存在が、うめきた2期の文化そのものを体現してくれることだろう。

加藤沙耶(かとう・さや)
2019年ライクスタッフィングに入社。2022年2月よりライクに異動し、広報課主任を務める。現在は東京を中心に保育園や学童保育の現場を訪れ、ニュースリリースの作成などを行う。保育から介護まで、人に関わる仕事にやりがいを感じている。

写真・藤本賢一  文・久保寺潤子

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