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「Time Out Market」がアジア初進出、大阪の多様性と情熱を感じられるフードマーケットとは

ディディエ・ソイヤット

「Time Out Market」がアジア初進出、大阪の多様性と情熱を感じられるフードマーケットとは

『Time Out(以下、タイムアウト)』は、地元密着型のシティガイドでありながら、世界59カ国333都市、14言語(2022年7月時点)で展開するグローバルメディアブランドだ。2012年ロンドンオリンピック・パラリンピックでは公式トラベルガイドとして採用された実績もあり、ウェブサイトやSNSなどさまざまなメディアで展開している。

そのタイムアウトが2014年に新たな事業としてスタートさせたのが、編集者が監修する食と文化を体験できるフードマーケット「Time Out Market」。リスボンに1号店を誕生させて以来、ニューヨーク、ボストン、マイアミ、モントリオールなど、北米・アメリカを中心に展開。2021年には中東のドバイにオープンし、その都市の旬なグルメを味わうことができる人気のスポットになっている。そうした「Time Out Market」が、アジア初進出の地に選んだのが大阪・うめきた2期だ。Time Out Market 共同最高経営責任者(Co-CEO)のディディエ・ソイヤットさんに「Time Out Market Osaka」の全貌について話を聞いた。

「タイムアウトのミッションは、芸術や食べ物、飲み物といったその都市にある1番いいものを紹介することです。そして、それらの情報をリアルに体験できる場所が『Time Out Market』です。我々は“The best of the city under one roof”(その都市のベストをひとつ屋根の下に集める)というコンセプトを掲げていますが、ひとつの屋根というのは、スペースを共有し、そこでの体験をシェアするという意味です。うめきた2期には観光で訪れる人もいれば、仕事で訪れる人、住んでいる人もいる。そうしたさまざまな方々を巡り合わせる架け橋となり、新たな出会いの場をつくりたいのです。

ディディエ・ソイヤットさんは、ホテル業界で活躍されていた頃に国内(名古屋)での勤務経験があり、大阪グルメへの造詣も深い。

アジア初進出の地として大阪を選んだ理由について伺うと、「大阪は食い倒れの街だからね。たこ焼き、お好み焼き、串カツ……」と笑みを浮かべながら大阪の名物を挙げていくディディエさん。「グルメの街というのも理由のひとつですが、大阪は日本で2番目に大きい都市で16世紀には天下統一の拠点でもありました。それだけ歴史があり文化がある。そして大阪の人々は、食べること飲むことを楽しみ、外に積極的に出かけ、人生を楽しむことに長けています。私たちタイムアウトのDNAとマッチすると思いました」

また、大阪の文化や気風だけでなく、2025年に開催する大阪・関西万博も大きく影響したという。
「2021年ドバイで国際博覧会が開かれたタイミングで『Time Out Market Dubai』を開業しましたが、非常に大きな成功を収めることができました。うめきた2期はロケーションも最高ですし、国際博覧会が開催されることによって、大勢の外国人が来日することが予想されます。しかし、大阪は大きな街でレストランもたくさんあるため、大阪に初めて訪れた旅行者はどこに行けばいいのか戸惑うかもしれません。そこで、大阪で1番美味しいものを食べられる場を分かりやすく提供する必要があると思ったのです」

2014年、ポルトガルの首都リスボンに1号店としてオープンした「Time Out Market Lisbon」。1882年開設の歴史的建造物メルカード・ダ・リベイラをリノベーションしたフードマーケットにリスボンの旬なグルメが揃い、2019年には年間400万人以上が来場し、一大観光スポットとなっている。
2021年に開業した「Time Out Market Dubai」。昔のスークを再現したショッピングモールのスーク・アル・バハルの中心にあり、屋根付きテラスから世界最大の噴水ドバイ・ファウンテンや高さ828mの超高層ビルのブルジュ・ハリファなどが見渡せる。

「Time Out Market Osaka」がオープンするのは、うめきた2期の約3,000㎡のスペース。厳選された関西のレストラン15店舗と2つのBARがオープンする予定だ。
「出店のラインナップについては、まだ何も決めていません。大阪は自由な気風でトレンドも常に流動的です。さらに2025年に日本国内でどういったグルメトレンドがあり、大阪のトレンドがどのように変化していくのか予測することが難しいからです。『Time Out Market Osaka』の開業準備にあたって、メディアと連動しながら大阪を知り尽くし、大阪の食文化をよく知るエディターが最高のお店を選んでいくことでしょう。ひとつ言えるのは、私たちが大切にしていることは“ローカルであること”。いわゆるチェーン店ではなく、独自のスタイルを持ちながら非常に美味しいレストランであることが重要です。ミシュランの星を獲得したシェフももちろん『Time Out Market』に参加できますが、訪れた人が満足する値段で料理が提供されることを要望しています」

また、このマーケットで食を提供する若手シェフの育成にも力を入れたいと続ける。
「どの都市でも言えることですが、ビジョンや才能があっても、資金を十分に準備できないがために活躍の機会を逃してしまう若手シェフが数多く存在します。これまでにオープンした地でもそうでしたが、大阪でも新進気鋭のシェフを見つけ出し、その成長の手助けをしたいと考えています。私たち独自のユニークなやり方ですが、シェフにはキッチン設備や必要な調理器具など全て提供し、すぐに調理に取り組めるような支援をしたいと思っています」

食は、その都市の文化や伝統、風習を五感を通じて知るツール。味わうことでその土地の文化や風習を知ることができる。また食を介してコミュニケーションが生まれ、オープンイノベーションを創出していく。世界から多種多様な人が集う国際都市であるうめきた2期は、「Time Out Market Osaka」を通して、これまで知らなかった新しい大阪を食で体感できる場になりそうだ。

ディディエ・ソイヤット
フランス生まれ。Time Out Market Co-CEO。タイムアウト入社以前は、世界各国でレストランやクラブなどを展開するイギリス企業「Hakkasan」の上級副社長を務め、同社のグローバルなレストランポートフォリオを監督。それ以前は、セルフリッジ、ハロッズ、デイルズフォード・オーガニックなどの小売ブランドで上級管理職を務める。2016年2月22日より現職。

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