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未来都市グラングリーン大阪から新たな価値を創造する、Hondaのソフトウェア開発新拠点とは?

未来都市グラングリーン大阪から新たな価値を創造する、Hondaのソフトウェア開発新拠点とは?

テクノロジーの発展によって、自動車事業は100年に一度と言われる大変革期を迎えている。それに伴って、1948年創業のHondaも今を第二の創業期と謳い、多くの改革を行なっている。そのひとつが「ソフトウェアデファインド」だ。これまでは、ハードウェアを定義したうえでソフトウェアを決める開発プロセスだったのに対して、これからはソフトを定義してハードウェアを決めていく考え方になるというものだ。Hondaは、2025年春にソフトウェア開発の新拠点をグラングリーン大阪に開設する。Hondaが大阪で今後どのような取り組みをしていくのか。ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部の3名に話を聞いた。

左から、岩根雅史さん/本田技研工業株式会社(ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部 モビリティシステムソリューション開発部 アシスタントチーフエンジニア)、鈴木宏章さん/同 電子プラットフォーム開発部 チーフエンジニア)、三雲隆平さん/同 電動ソフトウェアソリューション開発部)

――まず「ソフトウェアデファインド」とはどういったものでしょうか?

鈴木:これまではエンジンやブレーキといったハードウェアを中心としたクルマづくりが主流でした。もちろん、ソフトウェアも重要な位置付けではありましたが、開発プロセスとしては、クルマというハードウェアの中にソフトを組み込んだらそこで完結するものでした。ですが、これからはソフトウェアが主体となります。クルマに搭載したソフトウェアをアップデートし続けることで、自動車の性能や機能を常に最新の状態にしていくようになります。つまり、クルマの性能を左右するソフトウェアが開発の中心となってくるという考え方です。

社歴30年以上の鈴木宏章さん。エンジニアとして長くF1やインディカーの開発に携わってきたが「大阪の地でソフトウェアエンジニアを中心に高い開発力を目指していきます」と意気込みを語る。

――ソフトウェア開発拠点を大阪に新設される理由はなんでしょうか?

鈴木:今までHondaの開発部門は、埼玉、栃木、東京といった関東を中心に展開してきました。ですが、今後、優秀な人材を獲得するために日本全国に目を向ける必要があるのではということで、まずは日本の第2の都市である大阪に拠点を構えて、優秀な人材を募る目的で開設を決めました。

――ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部(以下、SDM)は、他部署からの異動や、多分野からのキャリア採用者もいらっしゃいますね。

岩根:そうですね。私は他分野からのキャリア採用でして、過去に自動車のEPSソフトウェア開発経験はあるものの、直近では主に医療機器ソフトウェアの開発に携わっていました。前職で働いている時からも、これからはどの分野においてもソフトウェアの重要性が増していくだろうということを肌で感じて仕事をしていました。その中で、私がHondaに転職を決意したきっかけとしては、会社として「ソフトウェアデファインド」を掲げていることのほかに、20代から関西に住んでいるので、勤務地が大阪ということが大きいです。

「新オフィスが関西の特色を生かした、コミュニケーションのハブになるような機能を備えて、大阪でしかできない横断的な拠点となるように私たちもチャレンジしていきます」と岩根雅史さん。

三雲:私は新卒入社で、これまでは市場品質監理を行う部署にいました。国内における製品の不具合報告などの情報収集やその対策推進を行い、再発防止に努めるといったことを業務としていました。大学時代にソフトウェア関連の研究を専門としていたこともあり、これまではお客様に近い立場で製品の改善に努めていましたが、今後はソフトウェア開発を通じてお客様に満足してもらいたいという思いから、この部署へ異動希望を出しました。

電気自動車に乗られているお客様の個性やライフスタイルに合わせて、価値を提供できるAI技術の構築を進めている三雲隆平さん。

―― 職場でHondaらしさを感じるところはどういったところですか?

岩根:Hondaは部品ひとつではなく、車1台の単位で物事を考えているのが、サプライヤーとは違うなと感じています。また、会議などで判断に迷うようなことがあれば、最初の目的や原点に一度立ち戻って議論が進められます。そして、その議論が闊達に行えるように、組織が縦割りだけではなく横串で専門チームが編成され、年齢や社歴も関係なくわいわいと集まって議論するのが特徴的です。まさにHondaの企業風土であるワイガヤ文化を体現していると感じました。

――新拠点で共に働く人材には、どういったスキルと人物像を求めているのでしょうか?

鈴木:大阪の拠点では主にソフトウェアの開発を行います。ソフトウェアといっても組み込み型の制御系ソフトウェアと、アプリケーションをアップデートするクラウド系ソフトウェア、そして、AIなどデータ解析する領域など、幅広い分野で技術者を募集しています。また求めている人物像としては、自分で何かをやりたいといった意志のある方、自分から問題提起をして解決する行動を起こせる方、新しいことをやりたいといった意欲のある方は大歓迎です。Hondaの社風上、一社員が提案したことにフォローアップして実際に事業化したケースはたくさんありますから。

三雲:キャリア採用で入社される方々には、これまでに培った知見を踏まえて、われわれHondaにいる人間には出てこないようなアイディアや考え方を提案していただき、刺激を受けたいと考えています。

岩根:新しいことを何かやるという観点でいえば、自動車業界はまさに今が100年に一度の転換期です。逆に捉えると、変えるチャンスは今しかないということでもあります。変えることに抵抗のない方と一緒に働いていければと願っています。

これからのクルマづくりでは、ソフトウェアを中心とした開発が進められていく。大阪の新拠点には、そのソフトウェア開発における様々な領域のエンジニアが集結し、Hondaらしい、魅力的な商品を創り出していくのだろう。

――二輪事業にはじまり多様なモビリティを通して新たな価値を創造してきたHondaにとって、“みどりとイノベーションの融合”を掲げる「グラングリーン大阪」に感じること、期待することはありますか?

三雲:大阪に根づいている企業や大学研究機関など、色々な背景や価値観が違う人たちと出会って議論できることを楽しみにしています。多様な価値観が混ざり合うことで、きっと新しいアイディアが生まれてくると思うので。また、これまでは栃木にある開発部門に勤務していたので、自分たちの職場から一歩外に出たら、すぐに会社以外の人と触れ合えるという感覚になかなか慣れません(笑)。栃木の開発部門は広大な敷地に沢山の人がいるので、そういったことはあまりありませんでしたから。

鈴木:そうですね。大阪に来て一番驚いたことは、見知らぬ人からよく話しかけられることです。バス停での待ち時間に隣に居合わせた人が気軽に話してくれるなど、コミュニケーションが活発な地域だなと感じています。さらにグラングリーン大阪は「関西最後の一等地」とも呼ばれるJR大阪駅北側に位置しており、神戸や京都など京阪神のアクセスも良好です。関西特有の高いコミュニケーション力と街の特性を通して、Hondaと良い化学反応が起きることを期待しています。

――グラングリーン大阪のパークタワーに入居されることが決定していますが、新オフィスはどのような空間になりますか?

鈴木:新オフィスを構想するにあたり「過去に捉われない新しい価値を、皆が誇りを持って生み出し続け、圧倒的な存在感のある集団になる」というビジョンを策定しました。ワークプレイスコンセプトは「いてまえ!やらまいか!やってみよう!」です。これは新拠点を置く梅田の大阪弁、Hondaの創業地である浜松の遠州弁、本社を構える東京とHondaに縁のある地の言葉でスローガンを作りました。オフィスのつくりは、閉じこもって仕事をするのではなく“見る・見せる・魅せる”といったコンセプトからフロア全体を見渡せ、シームレスにつながる空間を考えています。ソフトウェア開発の手法として生まれた「アジャイル」といった小集団で素早く実行しながら改善できる場を提供していきます。また、テクノロジーやモノやコトを他の企業や地域の方々とつなげていけるように、共同で作業できる場所などをつくることも予定しています。

写真クレジット:Graphic Facilitation by CBRE
1枚目は、新オフィス構想で発現したい行動シーンをイラスト化したもの。「こんなオフィスにしたい!」というイメージをもとに、新しいオフィスのデザインを作り上げていく(2枚目の画像はイメージ)

――グラングリーン大阪で見据える成長や今後の展望についてお聞かせください。

鈴木:いまHondaは第二の創業期と位置付けており、梅田でのソフトウェア拠点の開設時から急速に変化・発展する様子は、本田宗一郎が浜松の町工場から世界的な自動車メーカーに成長させた創業時の雰囲気とよく似ているのではないかと思っています。
Hondaは創業当時から世界一を目指していました。世界を目指すことで初めて日本一になれるからです。Hondaは昨年創立75年を迎え、二輪・四輪・パワープロダクツに加え、移動の可能性の更なる拡大に向け、eVTOLによる空の移動など、新たな価値の創造にもチャレンジしています。 チャレンジ精神、これがHondaの原点です。「ソフトウェアデファインドな世界」、ここグラングリーン大阪から目指していきます。

写真:東谷幸一 文:脇本暁子

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