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都市公園で知る、もっと気軽なスポーツの楽しみ方

都市公園で知る、もっと気軽なスポーツの楽しみ方

散策や憩うだけではなく、新たな使い方や多様なニーズに応える都市公園が増えてきている。2015年に日本初の観光拠点型パークマネジメント(PMO)事業を導入した大阪城公園をはじめ、スポーツを気軽に体験できる新しい取り組みや、訪れる来園者が活動的に楽しめる公園3カ所を紹介する。

●大阪城公園

大阪市営公園の1割もの面積を占める大阪城公園。105.6ヘクタールの敷地は、外堀を走ると約3.9㎞、園内には2.9㎞、3.5㎞コースなどがあり、自分に合ったコースを選ぶことができる。歴史を体感しながら、四季折々の自然も楽しめる人気のランニングスポットだ。2017年にはランナーサポート施設「RUNNING BASE大阪城」が誕生。JR大阪環状線の大阪城公園駅から徒歩2分のアクセスの良さに加え、ロッカーやシャワールームが完備され、ウエアやシューズもレンタルできるので気軽にランニングをすることができる。

約3,000本の桜や約1,270本の梅が植えられている大阪城公園。自然豊かな森の中で行うヨガ教室、ウォーキングやランニングの効率の良いフォームを学ぶ講習会などが人気だ。

●扇町公園

1923年に開園した歴史のある扇町公園。遊んで学べる子どものための博物館「キッズプラザ大阪」に隣接し、約7.3ヘクタールの敷地内には室内・屋外プールや大型遊具、グラウンドなどがある。近隣に天神橋筋商店街があるため地元の住民をはじめ、観光客、オフィスワーカーなど多様な来園者が集う。遊具で遊ぶ子どもやグラウンドでボール遊びをする親子、開放的な空間を走るランナー、さまざまな人が思い思いのスポーツを楽しんでいる。

JR大阪環状線の天満駅から徒歩約5分とアクセスも良い。広大な敷地と多様な設備によりさまざまな過ごし方ができる。(提供:Wikipedia)

●長居公園

65.7ヘクタールの広大な敷地の中にセレッソ大阪のホームグラウンド、ヤンマースタジアム長居やヨドコウ桜スタジアムなどのスポーツ施設を擁し、多くのスポーツ愛好者が集う長居公園。2021年8月から、東急スポーツオアシスと公園の指定管理事業者わくわくパーククリエイト、セレッソ大阪の3社コラボレーションによる健康増進事業「長居パークレッチ」がスタートした。ベンチや遊具に設置されているQRコードから、東急スポーツオアシスが提供するトレーニングアプリ「WEBGYM」にアクセスすると、そのベンチや遊具を利用したオリジナルのトレーニングコンテンツでエクササイズできる。

ベンチや遊具を使った筋トレやストレッチなど30種類のトレーニングコンテンツを提供している。

2003年からうめきたに携わってきた大林組の船橋俊一さん。2013年に開業した先行開発区域であるグランフロント大阪でソフト面の構築に尽力し、うめきた2期にも携わる。
「先行開発ではナレッジキャピタルやタウンマネジメントの視点でまちづくりを考えてきました。具体的にはまちの活性化に、使う側のアイディアやネットワークを有効に活用する、市民主導の参加型まちづくりのためのコミュニティプラットフォーム『ソシオ制度』をつくりました。これは市民の皆さんにオープンスペースを使ってもらい、地域社会に貢献するサークル活動を支援するもの。開業時にキッズスポーツソシオが発足され、北京オリンピック銅メダリストの朝原宣治さんがサブキャプテンになり、子どもたちに向けた走り方教室を開催したり、ヴィッセル神戸の元日本代表選手がヨガ講師とともにアスリートとして怪我をしないためのボールを使ったヨガ教室を開催したり、スポーツの敷居を下げて楽しく日常的にできるような取り組みを行いました。これらは我々が場所を提供し、専門家が経験やスキルを活かして社会貢献をするプロボノ活動*です」

船橋俊一さん/株式会社大林組 (大阪本店 建築事業部プロジェクト推進第二部長)
2013年にキッズスポーツソシオの活動として、北京オリンピック銅メダリストの朝原宣治さんが子どもたちにランニング指導を行った。

船橋さんはこれからのスポーツについて「スポーツそのものの概念の捉え直しが必要」と問題提起をする。スポーツの概念は、明治維新後に欧米から導入されたものだが、日本では心身の鍛錬や体育といった、鍛える、競い合って勝つという意味合いが強かった。スポーツ庁が定める「第2期スポーツ基本計画」では、スポーツとは「身体を動かすという人間の本源的な欲求に応え、精神的充足をもたらすもの」と定義されている。
「もともとスポーツの語源は気晴らし、気分転換が本来の意味なんです。もう一度、原点に立ち返るということが大切ではないかと思っています。スポーツの産業化の文脈でいわれるスポーツを“する・見る・支える”についても、“する”では施設整備が着目され、“見る”ではプロの試合観戦や放映、“支える”はオリンピック運営などのボランティア活動といったようにビジネス視点が色濃くなっていると思います。従来のトップアスリートを頂点とした競技スポーツというよりも、日常的な生活の中で身体を楽しく動かして、精神的な充足感を満たすスポーツにもっとフォーカスしていくべきだと思います」

日常的に身体を動かすには、公園という場は有効だという船橋さん。だが公園で競技スポーツをするのはデメリットがあるようだ。 「サッカーやフットサルなどはコートが必要ですよね。競技スポーツはやはり一定時間、場所を占有してしまうことがあります。でも例えば扇町公園などは、とても理想的な使われ方をしています。普段は競技スポーツをしている子どもたち数人がリフティングなどの狭い領域でできる練習をしている。その横ではバレーボールをしていたり、親子でバドミントンをしていたり。公園の一部分を独占するのではなくて、子どもがいるから配慮しながらボールを蹴ろう、と暗黙の了解ができているんです。管理者の視点で公園内ではボール遊びは禁止というのではなく、ルールはそこに集う人たち皆でつくっていく、そうした理想の姿を扇町公園では見ることができます」

子どもサッカーチームのコーチを10年務めた船橋さん。「スポーツを通じて地域との接点ができただけでなく、次世代を担う地域の子どもたちとの関係強化につながった」と話す。

2024年夏にまちびらきする、うめきた2期の都市公園についても期待を寄せる。
「前述した“する・見る・支える”は、トップアスリートのプレーでなくても、公園で子どもたちがフットサルを“する”様子を、通りすがりのおじさんが眺めているのも“見る”ですし、公園で思いきり遊べる環境を用意してあげるのも“支える”ということです。そうした市民活動を支えるところに力を注いでいきたいと思います。そういう場から新しいスポーツやルールが生まれ、スポーツの概念が広がっていくことを期待します」

“みどりとイノベーションの融合拠点”がテーマであるうめきた2期の都市公園にはイノベーションの要素を掛け合わせながら、新しいスポーツの概念を広げられる可能性があるのではないかと続ける。
「ウェルビーイングになれるまちづくりを目指して、データ利活用の取り組みについて検討しています。例えば健康の観点でいうと、運動・食事・休息等のライフログから『その人はどういう生活をしているのか?』をまず把握します。その人のライフスタイルに沿って、その人に必要な運動をリコメンデーションしてあげることで、生活習慣の改善ができるのではないかと考えています。まちで働くオフィスワーカーが自然と身体を動かし、それ自体がリフレッシュになればQOL向上にも貢献できるのではと期待しています。そのようなサービス、施設、ルールができたらいいなと思っています」
テクノロジーを活用し、スポーツを通じてヘルスケアにつなげる。新たに誕生するうめきた2期の顔となる都市公園で、未来の公園のあり方を見ることができそうだ。

*プロボノ活動:ラテン語の「Pro Bono Publico(公共善のために)」 を語源とする言葉で、仕事で培った専門的なスキル・経験等をボランティアとして提供する社会貢献活動。

ポートレート:内藤貞保 文:脇本暁子

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