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インフラ企業として地域とともに未来をつくるまちづくり

インフラ企業として地域とともに未来をつくるまちづくり

インフラ企業の観点から、地域に密着し、地域とともに街を育て支えてきた関西電力。堂島川と土佐堀川の2つの川に囲まれた中之島の地にふさわしい河川水を利用した地域冷暖房システムを事例に、新しいエネルギー時代を見据えながら、地域の持続的な発展につながるまちづくりについて関西電力株式会社 ソリューション本部の髙宮紀子さんに話を聞いた。

髙宮紀子さん/関西電力株式会社 (ソリューション本部 開発部門 専任部長)

関西電力は、“地域社会から信頼され、共に持続的な成長・発展を遂げる”という信条のもと、本社を構える中之島のまちづくりにも積極的に関わってきた。中之島にゆかりのある大阪を代表する民間企業や地権者など28団体で構成する「一般社団法人中之島まちみらい協議会」では代表幹事会社を務め、これまで中之島の地域整備やエリア防災活動、にぎわい創出に向けて官民連携で活動している。
「もともと中之島は、ビジネス街で、大阪大学が1993年に完全に移転した後は、週末はほとんど人通りがないような街でした」という髙宮さん。「それが近年、民間ビルの建て替えと合わせた公共空間や歩行者デッキの整備、大阪市立科学館や国立国際美術館、こども本の森 中之島、そして今年2月に開館した大阪中之島美術館など文化・芸術施設の集積が進み新たな人の流れが生まれました。またタワーマンションも建設され、徐々に定住される方も増えてきています。近い将来にも、2024年に再生医療をベースとした最先端医療の未来医療国際拠点が開業し、小中一貫校が開校、そして2031年には関空・梅田・新大阪を結ぶ新路線『なにわ筋線』の新駅開業が予定されています。開発が進むにつれて、より一層多彩な要素が複層化するエリアとして、多くの人が訪れ、賑わう街になればと思います」と中之島の再開発に期待を寄せている。

2012年から関西経済連合会のうめきた専門委員会(現:都市創造専門委員会)にもスタッフとして携わり、構想段階からプロジェクトに長く尽力してきた髙宮さん。「実際に建物が立ち並んでくる様子を見ると新しい街ができるんだと感慨深いです」

こうした中之島のさらなる環境変化に対し、2021年には「中之島地域戦略プラン」を学識経験者や行政の方々と策定した。「エリアマネジメント団体なので具体的に強制力を持った形ではありませんが、ビジネス・文化・自然の融合するクリエイティブアイランドとしての中之島の中長期的なまちづくりへの“想い”を込めた提言になっています。今後中之島でまちづくり事業に携わる方々にまちの方向性や望ましい姿を考える際の参考になればと思っています。」

水都大阪のシンボルアイランドとして水辺空間の賑わい活性化に向けた活動だけでなく、川に挟まれた地形を活かし、未利用エネルギーとして河川水を利用した地域冷暖房システムをグループ会社の関電エネルギーソリューションが導入している。
「オフィスビルの場合、エネルギー消費に占める空調の割合が大きく、夏は外気より涼しく、冬は外気よりも温めなければいけません。その温度差が大きければ大きいほどエネルギーを消費してしまうのですが、河川水は気温の影響を受けにくく外気に比べ夏は冷たく冬は温かい。その特性(温度差)を有効利用した脱炭素にもつながるシステムです」
当初構想から四半世紀余り、中之島2、3丁目のビル群の建て替えに合わせて段階的にエネルギーの供給を行い、今春開館した大阪中之島美術館のある4丁目エリアにも供給が開始された。

画像左:オフィスビル前の堂島川に取り付けられている河川水取水設備(画像内右下)。取り付けられた取水管から河川水を取水し、ヒートポンプの熱源として利用する。
画像右:取水した河川水は、ヒートポンプの熱源として利用し、その後、土佐堀川へ排水する。排熱を大気に直接放出する必要がないためヒートアイランド対策としても有効だ
関西電力ビルの地下にある地域冷暖房システムのプラントからは、今年2月に開館した大阪中之島美術館のほか2024年春開業予定の中之島4丁目未来医療国際拠点へ熱供給が導入される予定。

「現代はエネルギーの使い方や価値が昔と大きく変化しています。以前は電力会社が発電から供給まで一貫して担い、水力、火力、原子力と最適なバランスで組み合わせ発電し送配電線を通じてお客様のところにお届けしていました。現在は再生可能エネルギーなどの分散電源で電気もつくれるし、蓄電池で電気を貯められる。電力をどこから買うか、環境価値にどの程度配慮するかも選べるし、地域でエネルギーの地産地消を目指す動きもでてきています。電気は、照明・動力・空調、情報など形を変えた生活のさまざまなシーンを安定的に支える役割がありますが、このような状況変化や技術革新と合わせて環境性や防災性、スマート化といったまちづくりでエネルギーの担う役割も大きくなってきています。」

2024年夏に先行まちびらきをするうめきた2期のエネルギーインフラにおいても、最先端の環境技術や資源循環インフラが導入される予定だ。開発に先駆けて2014年に国土交通省が支援し、関西電力と大阪ガスとNTT西日本の3社が連携して大阪市とともに大阪らしさを活かした創蓄省エネモデルを構築するリーディングプロジェクトを手掛けてきた。
「“みどりとイノベーションの融合拠点”といううめきた2期のまちづくり方針ができる前で、8年前の当時は脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)がそこまで声高に叫ばれていませんでしたが、更地から大規模開発するうめきた2期における次世代エネルギーシステムの最先端モデルとはいったいどういうものだろう? と3社の知見を結集して実証段階の未利用エネルギーやICT技術を検討しまとめました。その後、まちづくり方針に内容が反映され、国内初となる大規模帯水層蓄熱やバイオガス発電、下水熱利用などそのいくつかが採用されようとしています。そうした開発初期からまちづくりに関われる機会があるのはインフラ会社の醍醐味だと感じています」
今年度には国交省のサステナブル建築物等先導事業の採択を受け、複数のエネルギーシステムにおける複数事業者での最適運用や非常時も含めた街区間エネルギー融通などのエネルギーマネジメントプログラムに関する検討会が立ち上がり、開業後を見据えた効果的かつ持続的な利活用の仕組みづくりが行われる予定だ。

ライフスタイルや価値観が多様化する中、エネルギーも技術やサービスを自由に選択できるようになったいまだからこそ、お客様や地域にとって一層最適なエネルギーの在り方をご提案できる時代になったという髙宮さん。「そのお客様やその地域に何がもっともふさわしいのか最適なものを提案し、エネルギーインフラからまちづくりに貢献できる、多様化したがゆえの機会も増えてきています。新たなライフスタイルやゼロカーボン化、レジリエンス性向上などのさまざまなニーズにお応えすることで、新たな価値を提供し続け、地域の未来や持続的な発展につながるようお役に立てればと思っています。そして、2024年に開業を控えるうめきた2期は、エネルギーインフラも含め携わってこられた方々のまちづくりに対するさまざまな想いや知見、最先端の技術などまちづくり要素の粋を集めたまちです。いろいろな化学反応を起こしながら新しいものが生まれ、変化を先取りし続けていく、いつの時代も最先端の街になると期待しています」
みどり豊かな都市公園を中心に据えた新しい街の、環境負荷を低減させた自立したエネルギーインフラは、サステナブルな社会の実現に貢献するだろう。

撮影:内藤貞保 文:脇本暁子

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